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| - | | - | - | pookmark | 昨年の記事
「影のない女」を観る
今年のザルツブルク音楽祭最大の注目公演、リヒャルト・シュトラウスの歌劇「影のない女」を観る(所見:8月1日 祝祭大劇場)。

ザルツブルク音楽祭はリヒャルト・シュトラウスらの提唱のもと(他にマックス・ラインハルトとフーゴ・フォン・ホフマンスタールも名を連ねている)、1920年に創設したフェスティバルだから、これまでにシュトラウスのオペラ作品も数々上演され、歴史に残る名演もいくつかあるが、今回の公演はまさにこれらに並ぶほどの作品といってもよいのではないか。

なんといってもこのプロダクションの最大の立役者は演出のクリストフ・ロイと言っても過言ではないだろう。設定を「未知なる国」から「1955年のウィーン」へと変更し、「神秘の国のおとぎ話」から「辣腕プロデューサーが率いる「影のない女」の録音現場(舞台装置は完全にソフィエンザールだから、デッカのチームによるレコーディング。実際にこの年の11月から12月にかけて、カール・ベーム指揮のもと「影のない女」が世界初録音として行われている)」へと変更されているが、実際の音楽進行と、芝居の進行(録音の進行)とが同時に進められている。

登場人物も設定を置き換えられていて、全員が歌手であり、皇后(アンネ・シュヴァネウィルムス)は「駆け出しのソプラノ」に、乳母(ミヒャエラ・シュスター)は「伝説的歌手」、バラク(ウォルフガング・コッホ)とその妻(エヴェリン・ハルリツィウス)は私生活上も夫婦だが、夫婦仲はうまくいっていない(そういえばそんな夫婦がいたような…)、そして皇帝(ステファン・グールド)は初めて海を渡って来たテノール(ご丁寧なことにいつもマネージャーらしき人物が寄り添っている)といった具合だ。

若きソプラノはこのヤンキー・テノールに恋し、「私もいつか一流歌手になって、彼に認めてもらいたい!」と心に誓い、その心情を手紙にして渡す(ト書には皇后が狩りに出る皇帝の安否を気遣う手紙)。このような人間模様を眺めながら伝説的歌手はアドバイス(時には嫌がらせやちょっかい?)をするといった調子に完全に読み替えを通り越して「すり替え」をしているのだが、これがことごとくはまっているからある意味タチが悪い。

だが一番興味深いシーンは、皇帝が石にされてしまうシーンでなんと彼は上階の調整室にいるではないか。それも辣腕プロデューサーと共に。これでピンと来た、このプロデューサー氏こそ本来は登場し得ない「影の登場人物」、カイコバートなのだ!それを裏付けるシーンとして、第3幕の伝説的歌手(乳母)の舞台登場の前に彼はわざわざ階下に降りてきて、彼女と何やら打合せしたり、皇后が乳母に訣別するシーンではずっと現場の傍らにいて乳母を見て(監視?)いるなど、進行上重要な演技をしている(そういえば録音現場におけるプロデューサーは一切を仕切る役割だから…)。そういった点からも細部に渡って細かいところまで気配りが効いたクリストフ・ロイに我々はなすすべもなく完敗だ!

歌手も総じて素晴らしい。乳母役のミヒャエラ・シュスターは、文字通り「悪女」を演じているが、皇后に見せる「母性」をも見事に表現した。また前述第3幕の場面では、「ご主人様」カイコバートの意に添わない結果になることを恐れている表現も見逃せない。皇后役のアンネ・シュヴァネウィルムスもまた「読み替え」演出である意味難しくなった役作りを好演している。バラク役のウォルフガング・コッホとその妻役のエヴェリン・ハルリツィウスは、見事な歌唱で聴衆を魅了している。そして皇帝役のステファン・グールドは、いまいち影の薄い存在ながら、しっかりと歌っていて好感が持てる。

もう一人このプロダクションの成功の立役者を忘れてはならない、それは指揮のクリスティアン・ティーレマン!彼の存在なしにここまでの成功はなかっただろう。このシュトラウス最大級の分厚いオーケストレーションを充分に鳴らしきり、かつ室内楽的に歌わせる箇所では、こちらが涙が出るほどに美しく聴かせてくれる。リヒャルト・シュトラウスがもしこの会場で聴いていたら、「これこそ理想の演奏!」というに違いなかろう。まさにシュトラウス節炸裂!ティーレマン節全開の演奏だ!ティーレマンのドライブを真正面から受け止めて、それに見事に応えたウィーンフィルの貢献も見逃せない。

総評として、私が観たこの20年の「影のない女」上演の中で、今回が最高の作品のひとつに挙げられると声を大にして言いたい。
| コンサートレビュー | 18:40 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark | 昨年の記事
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